原点とは

2017.11.25 Saturday

0

    JUGEMテーマ:人生論

    先日、同じ設計をしている知り合いから連絡があり、

    会社の仕事を手伝ってほしいとの話があった。

    現状は忙しく手伝う余裕がないことを伝えたが、

    まずは来て話をしようとのことで、

    その知り合いが勤めている会社へ向かった。

     

    話としては、住宅の設計図書作図や申請を下す等で単発で手伝ったり、

    さらには、週の半分を契約社員のように来てお客様と打合せも行い、

    それに対してある程度の給料並みのお金も払うことを伝えられた。

    その知り合いの手帳を見せてもらったが、

    1週間分の予定が休日以外はびっしりと打合せで埋まっていた。

    また、参考に現在打合せ中の方の図面や着工中の図面も見せてもらったが、

    この図面でよく建つな、と思える程度の図面精度で

    その人の設計力を考えれば図面を書く時間もないぐらいに

    本当に困っていることが伝わった。

    ただ、給料は良いらしく大変ながらもなんとか踏みとどまっている感じだった。

     

    帰り道にいろんなことを考えた。

    去年の春から自分の設計事務所を始めて

    ありがたいことに常に忙しい状態が続いている。

    ただ、頭の片隅では仕事に対しての入出金や銀行の貯金額の計算を

    大げさではなく毎日している。

    常に不安が付きまとう。

    当たり前の話だが、仕事が入ってこず、貯金がなくなれば

    事務所を継続することができない。

    それで終わりだ。

    それが怖いから紹介やコンペ等で私の事務所が主体の仕事をメインに考えつつも、

    単発で知り合いの会社の手伝いで下請けとして設計をしているのも事実である。

    もちろん下請けだからといって手を抜くことはないが、

    私の事務所が主体の仕事に比べ、いろいろな条件が決まっているので、

    勝手なことはできない。

    さらに下請けレベルの対価しかもらえない。

     

    知り合いから提示のあった給料並みのお金は毎月もらえるので、

    毎日の不安から解放されるのはうれしいとも思った。

    ただ、週の半分をある種のルーティーンに費やしても良いのだろうかとも思った。

    お金面で安心はできても、いろいろなことを勉強し挑戦する時間もかなりなくなってしまう。

    迷った時は原点に戻る、ということで、そもそも私が設計事務所を始めた理由を考えた。

    ホームページにも書いているが、

    「建築のプロフェッショナルとして、新たな価値観を提案する」ことを目標として事務所を始めた。

    ただ、これはこれで本当にそう思っているが、さらに根源を考えてみた。

    一つは設計に限らず、今までの人生経験上、自分の行為で他人に喜んでもらうのは

    とても幸せな気分になるということである。

    老人に席を譲ってお礼を言ってもらった、バイトでおいしいコーヒーをいれてお客さんが笑顔になった、

    自分なりに納得いく設計を行い建築主に褒められた、等。

    そして、設計を志したのは確か本屋で立ち読みしたインテリア雑誌で

    椅子とか建物とか設計するのはかっこいいな、と思ったことがきっかけだったと思う。

    その後、設計事務所はこじんまりとしている所が多いけど、

    自分のペースでこつこつと仕事をしていることを知り、

    そんな仕事の仕方も憧れるなと思った。

    結局、かっこいいと思える仕事で人に喜んでもらえることに憧れたから

    今の自分がいるのだと思った。

     

    話は変わるが、今年はまだ終わっていないが、今年一番悔しく思ったことがあった。

    参加要件の厳しくないプロポーザルには積極的に参加しようと考えているが、

    先日、要件が厳しくない、木曽町役場本庁舎・防災センターの設計プロポーザルがあった。

    しかし、自分の仕事としてのプレゼンの数が多く、

    また着工の準備等でそれどころではなく提出することを断念していた。

    ただ、1次審査通過者の名前を見ると、坂茂氏を始め、

    以前から注目していた有名な設計者達の名前が連なっていた。

    もちろん、提出した所で全く歯が立たなかった可能性の方が大きかったとは思うが、

    そんな人達と競うことができなくて本当に残念だと思った。

    そして、そういうことに悔しがっている自分に対して

    安心やルーティーンではなく、常に挑み、戦い続けることに価値を見出しているのだと思った。

     

    結局、その知り合いからのお誘いは断ることにした。

    不安は軽減できただろうが、そんな仕事をしている自分がかっこいいとは思えないし、

    挑み、戦い続ける時間を確保する方を優先したかったからである。

    また不安な日々と付き合うことにはなったが、

    改めて、何故、自分が設計事務所をしているかの再確認や

    何が好きでどうして行きたいのかを再発見することができて良かったと思う。

    不安を笑い飛ばし、表情も変えずに挑み、戦い続けていく自分に早くなれるように

    努力を積み重ねていきたいと思う。

     

    意外なところで

    2017.08.10 Thursday

    0

      JUGEMテーマ:建築・設計・デザイン

      現在打合せ中の方の概算見積が先日工務店より出てきたが、

      全体的に予想よりも高く、特にフローリングが高かった。

      今日は以前にお世話になったフローリング等の無垢材を

      主にネット販売している会社の方と打合せを行った。

       

      こちらからの要望で準備してもらったナラ材のエージング加工しているフローリング。

      次回の打合せで建築主にも確認してもらうが、

      おそらく希望する仕様の無垢材だった。

      金額も2〜3割は当初仕様よりも安くなりそうなので、

      他の仕様との兼ね合いもあるが、採用可能性はありそうだ。

       

      打合せも終わり、雑談をしていると、

      「田中さんのブログ、見てますよ。」とのこと。

      その方とは以前に1回しかお会いしていないが、

      私のブログを見ていることに驚いた。

      そして、「他の設計事務所に比べて、

      お客さん対応や現場をきっちり監理されてますね。」と褒めてもらった。

      その方は設計事務所はもちろん、個人の一般ユーザーともやり取りしているので、

      話は上手で接客にも慣れているので、お世辞の部分もあると思うが、

      設計事務所と工務店とのやり取りの大変さや、

      建築主との共通理解を作ることの重要性、等

      この業界を知らないと分からない、いろいろな苦労を踏まえた上で褒めてもらった。

      意外な所で意外な人からの励ましだったが、

      私なりに筋を通して仕事をしていることが他人にも伝わる実感を持てて

      なんとなくうれしい気持ちになった。

       

      木を見て森を見ず

      2017.06.05 Monday

      0

        JUGEMテーマ:人生論

        先日の予備試験以降、新たな勉強方法で勉強を始めていた。

        しかし、まだ1年後にも関わらず、

        ここ1,2週間の感覚からして、

        すでに自分の設定する到達点に

        辿り着けない可能性が高いことが直観的に分かり、

        ぼんやりと焦っていた。

         

        また、コンペの締め切りが近づいているが、

        今動いている設計や現場等の諸々のことをしているうちに

        作業がはかどっていなかった。

         

        そして、以前からちょっとずつ動いていた知り合いの紹介の

        設計の仕事の話があったが、急に2件が動くことになった。

        非常にうれしいことだが、良い建物を設計しようという

        期待と不安が入り混じった気持ちになっていた。

         

        そのような混沌とした状態で、

        それぞれをどのように進めれば良いか、

        どのような心の持ち様で行けば良いかをここ最近悩んでいた。

        特にここ数日は会社員時代にスムーズに仕事ができていたことと比べて

        今は何が異なり、何が原因で悩んでいるのかを悩んでいた。

         

        そして、出た結論は「木を見て森を見ていなかった」ということだ。

        会社員時代の仕事の仕方は何年もやっているうちに

        自分の型ができてくる。

        型が出来てくれば、全体を見渡す余裕が出てきて、

        どのような手段で、どこに力を入れれば良いかが分かってくる。

        そうなると、仕事の質も上がってくる。

        その逆に、やり始めて十分な時間も経たない不慣れなことは

        一生懸命やっているうちに全体を見渡す余裕がなくなり、

        手元ばかり見るようになる。

        結局、質は落ち、何を目的にしていたかさえ分からなくなってくる。

         

        そう考えると、予備試験の勉強はこの数年やってきているが、

        まだ、分かったという状況まで行けていない。

        そして、コンペは学生の時も含め、ほぼ応募したことがないが、

        去年から国内でも有力な設計者達に交じって応募し始めている。

        また、設計は自分の事務所を開設して以降、

        高みを目指すには知識も経験もまだまだ足りていないのを痛感している。

        要は、今やっていることはまだ不慣れで全体を見渡す余裕を失っていたにも関わらず、

        気持ちだけが焦っていることが分かった。

        ただ、それが分かれば、全体を見渡し、どのような手段でどのような目的を達成するかの

        検討に時間を掛け、あとはすべきことをしていけば良い。

        結論は当たり前の話だが、ここまで来るのに非常に時間がかかった。

         

        昨日は今後の予備試験の仕方を改めて考えていた。

        夜中から考え始めて結局朝方まで時間がかかった。

         

        去年1年で勉強していた本。主に予備校本。全ては読み通せていない。

        勉強方法を必死に考えていて、ふと今使っている本はどれぐらいだろうと全部積み上げたら

        明らかに1日3時間程度で1年がんばってもやりこなせない量だと分かった。

        また、予備校本に種類を絞っていたが、自分の本棚の設計の本の種類を見ていたら、

        大学の授業で使っていた本、官公庁が出版している本、インテリア雑誌等

        いろいろな本があった。

        そう考えると、何も一つの種類に統一する必要はないことに気付いた。

         

        今年1年で勉強しようと考えている本。基本書、予備校本などごちゃまぜ。

        基本書は10冊程度追加することになるが、

        去年まで使用していた本の量からすると2/3以下になる。

        これならまだ現実味が湧いてくる。

         

        どうしても結果を出したい、質を上げたいと強く思えば思うほど、

        視野が狭まり、全体を見渡すことがおろそかになる。

        そういう時はいったん立ち止まり、現状を把握し、

        焦った気持ちですぐに始めるのではなく、

        目的を明確にし、それを達成するためにどのような手段を選ぶべきかに

        しっかり時間をかけるべきである。

        そのことさえ忘れなければ、あとはその選んだ手段を実行していくだけである。

         

         

         

        すごい人

        2017.03.31 Friday

        0

          JUGEMテーマ:人生論

          中学3年の受験を控えた期末テスト期間中のある日。

          クラスで友人達と雑談をしていると

          今日のテストのために昨日何時間勉強したかの話になった。

          私は当時、部活だけやって勉強をしてこなかった焦りもあり、

          1日3時間は勉強するようになっており、そのことは自分の中で

          自信をもっている所だった。

          みんなが口々に1,2時間勉強したかを言い始めたので、

          ここで自信満々に言ってやろうと待ち構えていた。

          言おうとした直前に現在アメリカでスピーカーの研究をしている

          今でもやり取りをしているある友人が暗い顔をして

          「10時間しか勉強できなかった」と言った。

          彼の性格からして、自慢しようとかではなく、自分を恥じて

          言っていることが伝わってきた。

          私は口を開けたまま、恥ずかしさ、くやしさ、情けなさ、等の

          いろんな感情が駆け巡り、何も言えなかった。

          あれから何十年も経つがいまだにそのことは鮮明に覚えている。

           

          話は変わって、先日、大阪新美術館の公開プレゼンテーションを

          拝聴しに行った。

          残念ながら選ばれることはなかったが、以前から敬愛の念を抱いていた

          槇文彦氏のプレゼンテーションを一番の楽しみにしていた。

          若い時からこの業界の先頭を走り、

          高齢になった今もなお、先頭を走り続けている。

          そして、たまたま昨日、本屋で建築の本を物色していると、

          槇氏のインタビュー記事が本に掲載されており、

          よく見るテレビ番組が「情熱大陸」、「プロフェッショナル」とおっしゃっていた。

          !?

          私と全く同じだ。

          設計の能力は天と地ほどの差があることは分かっているし、

          見るテレビ番組が同じだから何なんだという所もあるが、

          設計に関して敬愛する人と同じ方向を向いているような気がして

          とてもうれしかった。

           

          世の中にはすごい人達がいる。

          そして、彼らは彼らの居場所で彼らなりの最大限の努力をしている。

          私のできることはたかが知れている。

          だが、そんなすごいと思える人達にいつか追いついて、追い越して行きたい。

          そんなことを日々、考えている。

          今月の住宅特集

          2016.12.21 Wednesday

          0

            JUGEMテーマ:人生論

            JUGEMテーマ:建築・設計・デザイン

             

            「住宅特集」とは新建築社が発刊している住宅に特化した建築雑誌である。

            新建築社はその他に「新建築」や「a+u」等の公共建築物や海外の建築の情報を

            伝える雑誌を出しており、大学の頃はそれらの雑誌をむさぼるように読んでいた。

            働き始めてからは不定期に購入したり、本屋で立ち読みしたりしていた。

             

            昨日もたまたま本屋に行った時に今月の住宅特集が出ていたので、

            ぱらぱらめくっていると「私の失敗」というコラムに安藤忠雄氏が寄稿されていた。

            大学の頃は、安藤忠雄、伊東豊雄、ジャン・ヌーベル、レム・コールハース等が

            世界の建築の中心におり、彼らの設計した建物の写真集や建築雑誌を読み、

            大学の友達と彼らの建築物について語ったり、批評したりして、あこがれの存在だった。

            特に安藤忠雄氏は関西に実作が多く、コンセプトも明快で

            私にとってのいわゆる「建築家」とは「安藤忠雄」であった。

            「私の失敗」というコラムは以前からコーナーとしてあるが、

            ほとんどが設計の若手や住宅建築家と呼ばれる人だったが、

            急にあの安藤さんが載っていたので、少し驚いた。

            しかも内容があの「住吉の長屋」についての内容だったので、その記事を思わず3回繰り返し読んでしまった。

             

            「住吉の長屋」は建築学会賞も受賞した安藤忠雄氏の初期の名作である。

            しかも、彼は設計事務所を始めて約50年近くが経とうとしているが、

            星の数ほど建物を建ててきても未だに必ず代表作として取り上げられる名作である。

            内容は詳しく言及しないが、概略を述べると、建築のことを良く分かっていない

            何者でもない一設計者が建築主や施工者の助力の下、情熱で完成させた建物である、ということだった。

            勝手なイメージで安藤さんほどの人であれば自信満々に住吉の長屋の設計図書を仕上げ、

            建築主も施工者もそれをあがめるようにして完成したものだと思い込んでいたが、

            その文章を読む限り、自信のない一青年の姿が透けて見え、今の自分とも重ね合わせて

            何か応援したくなるような気分になった。

             

            以前に京セラの創業者、稲盛和夫氏の本を読んでいた時に

            仕事の結果は「考え方×能力×熱意」の総体であるといった感じの文章があった。

            安藤さんの文章を読みながら、設計も考え方や能力は経験や知識で向上できるけども、

            熱意だけは死ぬまで持ち続けないと良い結果を望めないと改めて思った。