自分を信じて手探りで進むしかない

2018.05.02 Wednesday

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    事務所開業後の最初の案件で

    どうしても建築主がチークのフローリングを使いたいということで、

    安くチークを入れるためにご自分でフローリングの販売会社を探しだしてきた。

    そして、その担当者は建築主の思いも汲んで

    ちょっとでもコストを抑えるために

    無塗装品を現場納品し、建築主と共に現場塗装を行った。

    そのやり取りを知り、またその建築主もそのフローリングに大変満足していたので、

    私自身もその会社及びその担当者はとても信用できると考え、

    その後の案件は採用するしないはあったが、必ず見積を取るようになった。

     

    現在着工中のいくつかの案件でも実際に採用し、打合せ中の案件でも私からその会社の商品を勧めている。

    しかし、着工中の案件で依頼したものと違う厚みの見積書が届いたり、

    渡した図面の記載とは異なる部材寸法の発注書が届いたりしていた。

    また、1か月前から納品日を指示していたが、前日になって急遽、1週間以上納期が遅れる連絡があった。

    そんなことが続き、担当者は都度謝っていたが、彼が出張等が続いて忙しかったのは知っていたので、

    気にせずに今後もしっかりお願いしたいということを伝えていた。

     

    そんな中、現場からフローリングが必要数量に足りない、との連絡が入った。

    そこで、その旨、その担当者に伝え、急ぎ納品するようにお願いした。

    しかし、後日現場で話しているとそれ以外にも足りていない部材があることが分かった。

    以前にその担当者に納品してほしい部材とそれに関わる図面、その具体的な場所等を連絡していたので、

    何故そんなことになっているか分からなかった。

    その担当者に連絡を入れ、諸事情を話していると、その担当者がそもそも図面を読むことができない、とのこと。

    謝りながら、今度図面の見方を教えてください、と笑いながら言っていた。

    そして、なんとなく嫌な予感はしていたが、後日、数十万の請求書が届いた。

    その図面を読めていないことで見積できていなかった建材関係の請求書である。

    すでに建築主へは図面から拾い出したものとして請求書は渡していたので、

    今更、その請求書を建築主には出せない。

    こちらからすると、後出しの請求書は建築主へは提示できないし、

    私の方から必要な情報を伝えているのに何故こういうことになったかに対して、

    そちらはどのように考え、こちらはどうすべきだったか教えてほしいとの連絡をその担当者に行った。

    そして、今日、その担当者から連絡があった。

    「社長に掛け合って、5万円、値引きしてもらえることになりました。」

    こちらからの質問に対しての回答がある訳でもなく、謝罪がある訳でもなく、

    この担当者を信用していた自分がばからしくなって、怒る気にもならなかった。

    どちらかというと、自分の目が節穴だったことがショックだった。

    こちらも「値引きありがとうございます。近日、お支払いします。」と電話を切った。

    当初の信頼感でここまでお付き合いしてきたが、

    そんな無責任な仕事ぶりでは仕事を依頼したくても安心して依頼できない。

    今後、見積を依頼することもないが、仕方がない。

     

    自分で事務所を始めて一番不安だったのは、事務所運営を継続できるかである。

    そして、それと同じぐらいに不安だったのは、

    事務所を通しての私の行動の責任は全て私が取らなければならないことである。

    会社に所属していても自分で責任を取らなければならない場面も多いが、

    どうにもならない時にはバックに会社がいる。

    しかし、自営業者はそうはいかない。

    仮に自分自身に非がなくとも、責任を取る人は自分自身以外にいない。

    事務所開業1年目で信用・信頼できる人との仕事でないと事務所運営は危ないとは感じていたが、

    丸2年経ってそれはより強く感じるようになった。

    また、私自身、ある程度、人の性格や内面を見抜くことができると考えていたが、

    今になって思い上がりだったと思う。

    他人のことを理解することは、そんなに簡単なことではない。

    私自身にも言えるし、私以外の他者にも言えるが、

    人の本性は結局、絶体絶命な場面やお金が絡む時にしか分からない。

    信用・信頼できる人はそんな時でも逃げずに踏みとどまって

    自分なりの責任を果たそうとする。

    自分なりの筋を通そうとする。

    それは実際に今までそんな人達に会ってきたから確かなことだと思う。

    そして、私自身も彼らのその姿を立派だと思うから真似してきた。

    また、そのような姿勢を自分自身が取ることで

    長い付き合いの人はそんな信用・信頼できる人しか残らないような気がする。

     

    設計の仕事の多くは、初めてお会いする建築主、初めて組む施工者、

    初めて使う商品のメーカー等、よく知っている者同士の継続的な仕事ではない。

    だから、どうしても蓋を開けてびっくりということが多い。

    それは設計者自身にも言えることではあるが。

    それでも大きな枠組みで言えば、設計業務も社会の中の商売の一つに過ぎない。

    そして、商売について一つ言える確かなことは「信用・信頼が最も重要」であると思う。

    これはどんな業種にも当てはまると思う。

    誰しも、ミスや勘違いはある。

    だが、どんな時でも逃げずに踏みとどまって、

    信用・信頼を勝ち取る仕事をしていきたいと思うし、

    どんな状況でも自分の責任を果たす覚悟は一生持ち続けたいと思う。

     

     

    東京

    2018.04.23 Monday

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      JUGEMテーマ:人生論

      去年の冬、話の中で中学時代のある友人の話になった。

      そして、その翌日、たまたまその友人から彼のお父さんが亡くなったとのハガキが来た。

       

      私自身、転校も多かったし、大学もいくつか行ったことで日本全国いろいろな場所に友人がいる。

      ただ、社会人にもなれば「いつか飲みに行こう。」と言いつつも

      なかなか会う機会もない。

      しかし、その友人は以前にもブログでも書いたが、

      私が3時間勉強していい気になっていた時に

      10時間勉強したのに、へこんでいた友人である。

      ちなみに、彼は勉強もできるが、スポーツもできる。

      字を書かせれば市から表彰される、

      私がその中学に転校した時に先生からの指示でサポート役をしてくれたが、

      いまだに友人ということからしても、人格的にも尊敬できる人物である。

      私からすると非の打ちどころのない、異次元の存在である。

      たまたまが続いたのと、私自身、最近の仕事でうまく行かないことが続き、

      誰かに意見を聞きたくなり、思い切って、彼の住む東京に彼に会うためだけに向かった。

       

      と言っても、やはり仕事柄、会うまでにちょっと時間があったので、

      待ち合わせ場所に近い銀座周辺を散策した。

      GINZASIXだけは見ようと考えていたが、敢えて事前にいろいろと調べずにぶらぶらとした。

       

      東京中央郵便局の一部保存活用ビル、KITTE。

      ほぼ、通り抜けただけだが、吹抜けと格子ガラス天井、全体のボリュームに圧倒された。

      帰って調べてみると、三菱地所+隈研吾。

      やっぱりか、と思った。

       

      KIRARITO GINZA。

      ぱっと見は普通の商業ビルだが、

      単なるカーテンウォールだけでなく、

      カーテンウォール自体に凹凸を付け、一部植栽がファサード化しているのが、

      印象的だった。

      帰って調べてみると、光井純。

      なるほど、という感じ。

       

      ミキモト銀座4丁目本店。

      これは遠目からも近めからもかなり目を引いた。

      板ガラスをシンプルに繰り返し使用しているだけだが、

      それに込めた思いが十分伝わってくるファサードだった。

      帰って調べてみると、内藤廣。

      やっぱりさすがだと思った。

       

      基本設計、外観デザインが谷口吉生氏のGINZA SIX。

      遠くから眺めたり、近づいて見上げたり、建物1周したり。

      すべてがシンプルで特殊なことはしていないし、

      設計監理までしていなくても、

      やはり谷口吉生氏の設計した建物だった。

      単にシンプルな訳ではなく、考え尽くしてシンプルだから

      こんなに魅力的なのだろうか。

      そんな設計をしたいと思う。

       

       

      資生堂銀座ビル。

      シンプルでコストも抑えている印象。

      けど、設計では粘ったのだろうと感じた。

      帰って調べてみると、竹中工務店。

      やはりそうか、という感じ。

       

      東急プラザ銀座。

      ファサードや建物のメインエントランスが

      ヨーロッパの設計者のように感じた。

      帰って調べてみると、日建設計。

      これはかなり意外だった。

      日建設計は優秀だなと思った。

       

      レンゾピアノのメゾンエルメス。

      これは10年以上前にも見たが、

      変わらず繊細だが存在感が他の建物とはレベルが違った。

       

      約1時間で足早に銀座周辺を散策したが、

      戻って一つずつ設計者を確認したら、

      やはりという設計者ばかりで納得しつつも、

      気になる建物しかチェックしなかったが、

      それでも知らずに要所を押さえていたので、

      自分自身の建築を見る目に対しても信頼がおけてうれしかった。

       

      その後、中学時代の友人と合流し、

      2軒はしごして、いろんな話をした。

      中学時代の思い出話、今後の世界の有り様、

      お互いの日々の仕事、将来の日本はどうなるか、等、

      最近は日々の目の前のことばかりに意識が行っていて、

      将来の日本や今後の世界の有り様のことを誰かと話すこともなかったし、

      そこまで意識が働いていなかった。

      ただ、そういうことも話せるぐらいにいろんなことに興味を持ち続けたいと思った。

      そして、今回特に、設計事務所を始めてから私なりに誇りを持って、

      私なりの哲学を持って、今まで来たが、

      それがうまく機能していないような、壁にぶち当たったみたいな状況も

      彼に説明し、意見を求めた。

      そして、彼が言ったことは「そのままで良いと思うよ。」だった。

       

      彼は私とは全く違う業種の全く違う内容を仕事としているが、

      話していて思ったのは、仕事の内容や相手は違えど、

      結局、考え方や取り組む姿勢はどんな仕事であろうと同じように感じた。

      私自身、自分の考え方や今までの経験に基づいて

      設計事務所を運営している。

      そして、それを土台に日々思うことに合わせてちょっとずつ修正し、

      より高みを目指せるように立ち位置を確認しつつ、

      変化させていっているつもりだ。

      ただ、結局、自分自身で考えている以上、思い込みや勘違いは避けられない。

      そして、壁にぶち当たるということはその考え方がおかしいということだと考えていた。

      しかし、最近悩んでいたことは何回考えても

      私の方でどのように考え、対処すべきだったかが分からなかった。

      簡単に言うと、相手が悪くて、私の何が悪かったのかが分からない。

      だが、相手だけが悪いことなんて、逆にないと思ったから余計に悩んでいた。

      ただ、彼も内容は違えど似たようなことで悩んだりしていたと言った。

      そして、彼の出した結論は怒らずに受け入れる、というやり方だと言う。

      かなり丸くなったよ、と笑っていた。

      しかし、私の方は似たような状況で怒っていると言ったら、

      それがうらやましいと言った。

      物事は何事も両面だが、怒るだけの強い気持ちがあるから怒ることができると言う。

      彼はもう怒らない自分が良いのか悪いのか分からないと言っていた。

      怒る私は自分ではまだ未熟だと思っていたが、そんな考え方もあるんだなと思った。

      もちろん、彼はどんなに優れた人だとしても、一人間である。

      彼が言うことが絶対ではないと分かっていながらも、

      彼といろいろと話をした結果、私の考えがずれている訳でもなく、

      間違っていないということが分かって、なんだかほっとした。

       

      その他、いろいろと話をしたが、私は彼の話をよくするが、

      彼も私の話を家族で話したりすることがあるらしい。

      そして、時間のある時は仕事の内容はもちろん、それ以外のことで読書や勉強をしているらしい。

      私も学生時代から変わっていないことの方が多いが、

      彼も彼で変わらずの感じのようで、なんだかうれしくなった。

      最後はがっちり握手して、またの再会を誓った。

      たった3時間の勉強で天狗になっていた自分を胸に刻み、

      こちらも日々の仕事と勉強を彼に負けないようにがんばっていこうと改めて思った。

      事務所開設から丸2年

      2018.04.01 Sunday

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        事務所開設から丸2年が経った。

        1年目で1軒完成し、2年目も1軒だけの完成だった。

        ただ、この1年はプロポーザルに応募して賞を頂いたり、

        住宅以外の案件の話を頂いたりで着実に前へ進んでいることが感じられる1年になった。

        その分、とても忙しく、いつも以上にうれしかったり、辛かったりと

        いろんな意味で内容の濃い時間を過ごした。

        だが、事務所を始めた当初からの、事務所を継続できるかの不安、

        このまま続けて自分の考える理想の設計を成し遂げられるかの不安は

        変わらず常に頭に存在する。

        どちらかと言うと、その不安は増している。

        がんばってはいるが、結果をきちんと出せるのかどうか。

         

        話は変わるが、先日、いつも見ている夕方のテレビのニュースのコーナーで

        京大医学部を目指す3浪中の女性を紹介していた。

        たまたま1年前にも同じコーナーを見ており、

        とても興味を持ってテレビを見た。

        受験前から合格発表までを放映したが、結果として

        第一志望の京大医学部には合格できず、第二志望の大学へ進むことになった。

        彼女は合格掲示板を見に行った時も、それを家族に報告する時も涙を見せなかった。

        それを見ながら、自分でも驚いたが、嗚咽が出るほど涙が出てきた。

        私も似たような経験をしているから気持ちが痛いほど伝わった。

        彼女からすると、偏差値が高いとか、人気があるか等は関係なく、

        理屈じゃなく第一志望の京大医学部を目指していたと思う。

        京大医学部じゃなきゃだめなんだと思う。

        そして、日々の生活はあれど、その第一志望の大学に合格できるかどうかのためだけに

        全てを費やしてきたはずである。

        周りの人からがんばっていることを褒められようが、

        模試の結果が良かろうが、そんなのは何の足しにもならない。

        第一志望の京大医学部に合格するためだけに

        全てを費やしてきたからこそ、自分自身に言い訳もできず、逃げ場もない。

        そして、彼女は泣くのを我慢していたから涙を見せなかったのではなく、

        何の感情も湧いてこず、涙も出ないぐらい絶望的な気持ちだったと思う。

        ただ、厳しい言い方をすれば、努力はしていたが、本当に精一杯がんばったのか、

        また、その努力の方向性は合っていたのか。

        勝負は時の運ではあるが、結果でしか判断してもらえないことに最善を尽くしていたのか。

         

        約20年前から建築と法律のプロフェッショナルになりたいと

        今は設計事務所を開設し、日々設計をがんばっている。

        そして、弁護士としても仕事をしたいと隙間時間で予備試験の勉強をがんばっている。

        がんばってはいるが、結果は出せたかと言うと、そうは言えない状態である。

        特にプロフェッショナルになりたいと考えているなら、結果を出していかなければならない。

        ただ、それに近道がないことは分かっている。

        他人のせいにも環境のせいにもできないことは分かっている。

        地道に一つずつのことを積み上げていくしか方法がないことも分かっている。

        全て分かっているなら、あとは行動していくしかない。

        一日一日を大切に精一杯に生きていきたいと思う。

        新たな1年が始まる

        2018.01.02 Tuesday

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          JUGEMテーマ:人生論

          年が明けて新たな1年が始まった。

          去年は本当に忙しかった。

          特に夏頃から年末までは怒涛の忙しさだった。

          ただ確実に1年前の自分よりも成長したのは感じるから、

          とても良い1年だったと思う。

           

          私は建築と法律のプロフェッショナルになりたい、というのが、

          一番の目標である。

          しかし、去年の後半は仕事の忙しさにかまけて

          法律の勉強がほぼ出来なかった。

          そして、建築に関しては成長は感じられたが、

          まだまだ知識も経験も足りないというのが実感である。

          そして、年末年始にいろいろと考えて、出た結論としては、

          とても普通のことだが、建築・法律を含め、

          集中した時間を確保し、それぞれの本をもっと読むべきということである。

           

          建築に関する本。

           

          法律に関する本。

           

          私は本をたくさん買うが、定期的にたくさん捨てる。

          以前は本を捨てるなんてもったいないと考えていたが、

          どこかのタイミングで本棚に並べることに満足して

          ほとんど読んでいない本がたくさんあることに気付いた。

          もちろん持っていればどこかのタイミングで役立つ瞬間もあるかもしれないが、

          情報や知識は使いこなせて初めて意味がある。

          特に趣味で読むのではなく、その情報・知識を血肉化しようとするのは

          ある意味、その本と戦っていくということであると思う。

          そうであれば、より内容のある本に絞って、

          少数と戦った方が効率的であると思う。

           

          おそらく今年は去年よりも忙しくなるような気がする。

          まずは本を処分することから始めて、

          1年後にまた成長を感じられるように今年1年も精一杯頑張りたい。

          原点とは

          2017.11.25 Saturday

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            JUGEMテーマ:人生論

            先日、同じ設計をしている知り合いから連絡があり、

            会社の仕事を手伝ってほしいとの話があった。

            現状は忙しく手伝う余裕がないことを伝えたが、

            まずは来て話をしようとのことで、

            その知り合いが勤めている会社へ向かった。

             

            話としては、住宅の設計図書作図や申請を下す等で単発で手伝ったり、

            さらには、週の半分を契約社員のように来てお客様と打合せも行い、

            それに対してある程度の給料並みのお金も払うことを伝えられた。

            その知り合いの手帳を見せてもらったが、

            1週間分の予定が休日以外はびっしりと打合せで埋まっていた。

            また、参考に現在打合せ中の方の図面や着工中の図面も見せてもらったが、

            この図面でよく建つな、と思える程度の図面精度で

            その人の設計力を考えれば図面を書く時間もないぐらいに

            本当に困っていることが伝わった。

            ただ、給料は良いらしく大変ながらもなんとか踏みとどまっている感じだった。

             

            帰り道にいろんなことを考えた。

            去年の春から自分の設計事務所を始めて

            ありがたいことに常に忙しい状態が続いている。

            ただ、頭の片隅では仕事に対しての入出金や銀行の貯金額の計算を

            大げさではなく毎日している。

            常に不安が付きまとう。

            当たり前の話だが、仕事が入ってこず、貯金がなくなれば

            事務所を継続することができない。

            それで終わりだ。

            それが怖いから紹介やコンペ等で私の事務所が主体の仕事をメインに考えつつも、

            単発で知り合いの会社の手伝いで下請けとして設計をしているのも事実である。

            もちろん下請けだからといって手を抜くことはないが、

            私の事務所が主体の仕事に比べ、いろいろな条件が決まっているので、

            勝手なことはできない。

            さらに下請けレベルの対価しかもらえない。

             

            知り合いから提示のあった給料並みのお金は毎月もらえるので、

            毎日の不安から解放されるのはうれしいとも思った。

            ただ、週の半分をある種のルーティーンに費やしても良いのだろうかとも思った。

            お金面で安心はできても、いろいろなことを勉強し挑戦する時間もかなりなくなってしまう。

            迷った時は原点に戻る、ということで、そもそも私が設計事務所を始めた理由を考えた。

            ホームページにも書いているが、

            「建築のプロフェッショナルとして、新たな価値観を提案する」ことを目標として事務所を始めた。

            ただ、これはこれで本当にそう思っているが、さらに根源を考えてみた。

            一つは設計に限らず、今までの人生経験上、自分の行為で他人に喜んでもらうのは

            とても幸せな気分になるということである。

            老人に席を譲ってお礼を言ってもらった、バイトでおいしいコーヒーをいれてお客さんが笑顔になった、

            自分なりに納得いく設計を行い建築主に褒められた、等。

            そして、設計を志したのは確か本屋で立ち読みしたインテリア雑誌で

            椅子とか建物とか設計するのはかっこいいな、と思ったことがきっかけだったと思う。

            その後、設計事務所はこじんまりとしている所が多いけど、

            自分のペースでこつこつと仕事をしていることを知り、

            そんな仕事の仕方も憧れるなと思った。

            結局、かっこいいと思える仕事で人に喜んでもらえることに憧れたから

            今の自分がいるのだと思った。

             

            話は変わるが、今年はまだ終わっていないが、今年一番悔しく思ったことがあった。

            参加要件の厳しくないプロポーザルには積極的に参加しようと考えているが、

            先日、要件が厳しくない、木曽町役場本庁舎・防災センターの設計プロポーザルがあった。

            しかし、自分の仕事としてのプレゼンの数が多く、

            また着工の準備等でそれどころではなく提出することを断念していた。

            ただ、1次審査通過者の名前を見ると、坂茂氏を始め、

            以前から注目していた有名な設計者達の名前が連なっていた。

            もちろん、提出した所で全く歯が立たなかった可能性の方が大きかったとは思うが、

            そんな人達と競うことができなくて本当に残念だと思った。

            そして、そういうことに悔しがっている自分に対して

            安心やルーティーンではなく、常に挑み、戦い続けることに価値を見出しているのだと思った。

             

            結局、その知り合いからのお誘いは断ることにした。

            不安は軽減できただろうが、そんな仕事をしている自分がかっこいいとは思えないし、

            挑み、戦い続ける時間を確保する方を優先したかったからである。

            また不安な日々と付き合うことにはなったが、

            改めて、何故、自分が設計事務所をしているかの再確認や

            何が好きでどうして行きたいのかを再発見することができて良かったと思う。

            不安を笑い飛ばし、表情も変えずに挑み、戦い続けていく自分に早くなれるように

            努力を積み重ねていきたいと思う。