働き方改革

2019.12.13 Friday

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    JUGEMテーマ:人生論

    数日前に約1年やり取りしている申請に関して

    あとは申請が下りるのを待つだけという状態になった。

    実際、役所の人からそう言われていた。

    しかし、昨日、連絡があり、多少の修正をお願いしたいとの連絡があった。

    こちらからすると、その多少の修正を約1年やってきて

    毎回、何をチェックしているのかと怒りたくなったが、

    ぐっとこらえて作業予定を変更してすぐにその相手方の所へ向かった。

     

    着いて話を聞くと、相手方から書類を出す直前に連絡があった修正内容が

    私の方で一部修正しきれていなかったため、

    修正が必要とのことだった。

    こちらの修正がしきれていなかったので、しょうがないと思いつつ、

    3か所程度の数字の修正を行った。

    5分もかからずに終わった。

    そして、時間に余裕があったので、

    ここ数年、役所との申請等でのやり取りに違和感があったので、

    思い切ってその違和感を具体的に聞いてみた。

    ちなみにその役所の担当者はまだ話の分かる人との印象だったので、

    聞く価値があるのではと思ったので、聞いてみた。

     

    約10年前は私が非住宅の設計を主に担当していたので、

    いろんな役所に申請等でやり取りが多かった。

    ただ、今振り返っても、ここ数年のようにやたら時間がかかったりすることもなかったし、

    役所からチェックが終わったとの連絡はちゃんと来ていたが、今はないことの方が多い。

    そして、以前はこちらから連絡しても明らかにその書類の審査が

    放置されているような雰囲気を感じることもなかったが、最近は何度かあった。

    また以前はそのやり取りしている申請に関しては役所の方がやはりしっかりしているとも感じたし、

    ある意味、頼れる存在だった。

    しかし、ここ数年は役所の人の言い方や指示の出し方がいい加減だったり、

    間違っていたりしたので、困ることも多く、嫌な気分になることも多かった。

    そして、何故そうなったのかの私なりの仮の答えはすでにあった。

     

    10年前に比べると、役所の人員自体が少なくなっていて、

    業務を十分に行えていないのではないか、

    また、優秀な人は昇進して担当者レベルではそうではない人が残っている状態なのではないか、

    そして、年々、書類の量が増えて以前よりも全てに時間がかかっているのではないか、

    さらにはそれらの結果として、外部に委託せざるを得ない状況で

    審査体制の質が落ち、その割に効率が上がっていないのではないか、等。

    多少、失礼な内容も含まれていたが、一個ずつ聞いてみた。

    すると、苦笑いしつつも、ほぼ全てその通りとのことだった。

    それを言い当てた自分にうれしくもなったし、納得もしたが、

    それ以上に将来に対して不安を感じた。

     

    最近はニュース等でも働き方改革として国やいろんな会社等の取り組みが取り上げられている。

    ただ、共通しているのは残業しない、とか、AIを利用して効率化する等、

    すごく小さな部分でかつ、目に見えて分かり易い部分に焦点が当たっているように思う。

    だが、本当に必要なのは理想は全体の仕組みを変えることだろうが、

    いきなりそれは難しいとしても、

    目に見えない、もしくは、見えにくい部分を変えていくことが重要なのではと思う。

    役所の例で言えば、人員が少なくなっていくのは変えられない現実としても

    そもそも書類の量を減らしたり、

    外部に委託せざるを得ない仕組みを変える仕事の仕方にしたりすることは可能だと思う。

    ただ、私も会社員時代、似たようなことを会社に対して思っていたし、

    それらは成果としては見えにくいが実際に働いている人からすると

    とても働きやすい環境を作ることになるだろうし、

    それに関わる人達にとってもプラスになると思う。

     

    役所とのやり取りやそれに対して思うことの結論として、

    世界は変わり続けているのに日本はあまり変わっていっていないように思う。

    それこそ、人口が減り始めたり、働き手も減り始めているのに

    今までと同じやり方で突き進んでいるように思う。

    きっとそれには限界があるだろうし、すでに限界が近づいてきているような気がする。

    そして、それは私自身にも当てはまる。

    私は設計を仕事にしているのだから、

    設計に関しての知識、経験を積んでいけば良いと思うが、

    世の中が変化している以上、やみくもに設計だけをやっていてもそれだけでは足りないように思う。

    こんな時だからこそ、地味だが、新たにBIMを始めようとしたり、

    設計以外の知識を得ようと日々、経済や哲学の本を読んだりしている。

    どれもすぐに目に見えて変化は分からないが、

    設計者が設計だけをしていても今後、厳しくなっていくように思う。

    司法試験合格を目指しているのもそんな理由のためだ。

    まだ具体的に設計と何かが具体的に結びついて

    新たな価値を生み出せるかの答えは見つかっていないが、

    根拠はないけども方向性はあっているような気がする。

    本当に小さな規模での変化ではあるが、

    きっとこんな小さな規模でもいつか世の中のためになると信じている。

    目指す先は遥かに遠い

    2019.11.19 Tuesday

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      JUGEMテーマ:人生論

      もう少しでいつもの午前3時。

      早く寝ようとするが、何故かこの時間になってしまう。

      申請書を取りまとめていて、

      日が変わる前に終わらせるつもりが、

      この時間になってしまった。

       

      この取りまとめていた申請書も

      もう少しで2年やり取りしている申請には負けるが、

      約1年かかって明日ようやく提出できる。

      以前に設計事務所で大規模な建物の申請を何回も出していたが、

      長くて半年ぐらいの記憶しかないから、

      ここまで時間がかかるのが謎だ。

       

      明日は打合せ等がないから

      午前中に行政法論文の答案構成を行い、

      午後からは来月頭締め切りのプロポーザルの原案を取りまとめる予定。

      したいことができるのはありがたいが、

      今年はまだ終わっていないが振り返ると仕事の依頼がしばらくない。

      先日急ぎということでプレゼン案をすぐに取りまとめて提出したが、

      まだ返事はない。

      また、今年は特にプレゼン案を提出しても

      返事が結局なく、まだ検討中かどうかの問合せをしても

      その回答すらないことが多かった。

      半年先、1年先は大丈夫だろうかと不安が募る。

       

      たまに他の設計事務所のHPを見ることがある。

      ブログ等をしている事務所もあるので覗いてみると、

      現場報告の内容は当然として、

      ふらりと訪れた海がきれいだった、とか、

      家族旅行の紅葉がきれいだった、等の内容もある。

      私は建築もして、法律も勉強しているから時間が人より少ないのは当然としても

      同じ設計事務所なのになんだか優雅だなと思ってしまう。

      必死に建築の本を読み込んだり、

      夜中まで申請書を取りまとめたりして、

      不安と常に隣り合わせの自分と対比して

      うらやましくも思い、その余裕は何なんだろうと疑問にも思う。

       

      小学生、中学生の頃を振り返っても

      体育の授業で徒競走をすればクラスで後ろから数えた方が早かったし、

      受験前の学年テストの順位も後ろから数えた方が早かった。

      ただ、その状況の自分に気付いて悔しく思って

      必死に努力しているうちに気付けば前の方に来ていた。

      自分自身でも思うが、

      建築と法律に関して私の目指す先は遥かに遠い。

      なかなか結果は出てこないだろうし、

      ひょっとすると私の望む結果まで行きつかないかもしれない。

      それでも私の望む結果に結びつく可能性のあることを

      一つずつしっかり実行していきたい。

       

      時間は何より大切

      2019.11.09 Saturday

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        JUGEMテーマ:人生論

        先月にようやく福祉施設の建物は完成したが、

        今月も引き続き、毎週、開発届出の協議で役所へ足を運んでいる。

         

        雪が積もっていた日もあれば、桜も咲いてた日もある馴染みある風景。

        来年の2月で丸2年が経とうとしている。

        ここまで来たら、いっそのこと、来年2月まで協議をしたいと密かに思っている。

        また、協議と言いつつも、こちらからするとほぼ協議する内容がないが、

        嫌がらせかと思うぐらいに呼び出されては図面を修正してを繰り返している。

        ただ、この長いこと協議をしていて分かったのは嫌がらせではないようだ。

         

        先日も電話連絡があり、図面内容に疑義があるという。

        以前から思っているが、電話で話していても空を掴むような話し方で

        私の理解力が足りないのか、もやもやと話が噛み合わない。

        そして、この課はメール、電話、FAXでのやり取りは認めていない。

        電話で呼び出されるだけしか方法がないらしい。

        それも場合による気もするが、一律にそうだということで

        仕方なく、打合せのために役所へ向かった。

         

        打合せを始めると図面の一部の配管設置予定位置がおかしいから

        再検討してほしいとのこと。

        打合せは1分もかからず終わった。

        このためだけに実質電車で往復1時間かけてきたのかと思うとげんなりした。

        私だったら、この内容ならFAX一枚と電話一本で終わるのにとも思った。

        今までもあまりに協議が長引いているので、

        何度か具体的な指示を求めたが、具体的な指示はできないと言う。

        逆に抽象的な指示に基づいて図面を修正すると

        その考え方では役所は納得しないと言う。

        とんちのようなやり取りで大げさでなく、

        30回以上は足を運んだだろうか。

        最初はそのやり方に腹が立っていたが、

        最近はこの人達はいろんな意味で大丈夫だろうか、と思うようになった。

        私はもちろん時間を取られて困っているが、

        その対応をしている彼らも同程度に時間を割いているはずである。

        しかも届出は申請の中では一番程度の軽い申請だから

        複雑な計算や検討は必要なく、ある要件を満たせば事足りる申請である。

        こちらも役所の意向に沿うつもりだから、役所から的確に指導をして

        早く終わらせた方がお互いの時間の節約になるはずである。

         

        役所の帰り道に寄った本屋で購入した、

        今年度の司法試験過去問と建築の本。

        司法試験手前の予備試験の勉強も細々と続けている。

        択一問題を一問解いて終わる日もあれば、

        論文問題の問題文に目を通し、答案構成までして、関連する判例まで読み込む日もある。

        建築の本も設計の考え方から見積の数量の拾い方や納まり、紛争になった事例の本まで

        時間のある限り、建築に関連する本を片っ端から読み込んでいっている。

        さらに今まで使ったことのない、RevitやGimp等の建築に関わる新しいソフトを

        マニュアル本を読みながら少しづつ使えるように練習している。

        プロポーザルも参加したいと思えるものが年末に一つ、年明けに一つ、

        最近募集があった。

        もちろん、現在、打合せをしていたり、申請していたり、現場が動いている案件を

        最優先に日々仕事に取り組んでいる。

         

        働き方改革等が叫ばれて久しいが、

        私は事務所を開設してから休みも取らずに働いている現状に悩んでいた。

        休みを取らないと良い仕事もできないのでは、と考えていたが、

        今思うのはどうせいつかは死ぬのだから、

        したいと思うことが目の前にあるのなら、

        休みを取るかどうかは関係なく精一杯やりたいと考えている。

        そして、興味があるからとは言え、自分のしたいと思うことが

        やってもやっても終わらないぐらいの量がある。

        だからこそ、時間が何よりも大切だと思っている。

        また、その時間の使い方で結果が変わってくるとも思う。

        役所の全てが今やり取りしているような人達とも思わないが、

        時間に対する考え方のギャップが大きくて毎回びっくりする。

        いろんな人間がいて、いろんな考え方があるから

        どれが正解というのはないと思うが、

        今後の日本社会を考えた時に時と場合をそれぞれの人が理解し、

        今まで通りのやり方に固執せずに目の前の人が望んでいるやり方を

        実行していくことが必要だと思う。

        スローダウン

        2019.09.18 Wednesday

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          JUGEMテーマ:人生論

          先日引き渡しを終えた建築主からメールが来た。

          少しずつ引っ越しを行っているとのことだったが、

          何人もの知り合いから新築の家を見せてほしいと言われ見せると、

          みんなテンションが上がっていたとのこと。

          改めて、本当に良い家を設計してもらって

          ありがとうございました、と言って頂いた。

          私が図面を書いて設計を行ったが、

          私のイメージはどんな建物も建築主との合作のイメージだ。

          私だけの力だけではなく、

          建築主との打合せやその建築主の人柄がその建物の完成度を決めていると思っているから、

          第三者に建物の完成具合を褒められると

          もちろん私もうれしいが、その建築主のことも褒められているようで

          違う意味でうれしくなる。

           

          ふと気づくと今関わっている案件が一時期に比べると落ち着いてきた。

          特に今年は2年前から関わっていた3つの案件が来月を最後に全て完成する。

          事務所を開設して4年目だが、

          1年目は自分なりの型を見つけるのに四苦八苦していたが、

          2年目以降は実際に依頼された案件、計画で終わった案件、等、

          休みなく、日々夜中まで図面を書いたりメールを送ったりして、

          がむしゃらに今日に至るまで走り抜けた気がする。

          設計事務所は設計の依頼を受けて初めて仕事として成立するから、

          常に自転車操業の仕事である。

          ただ、事務所を運営しながら徐々に仕事を精査し、絞っていくことで

          ようやく落ち着いてきた気がする。

          と言っても、仕事が来ない不安は常につきまとうから

          本気で落ち着いてはいられないが。

           

          話は変わるが、少し前のニュースで老後資金は2000万必要というのがあった。

          ただ、自営業者である設計者は国民年金だけなので、

          その前提でいくと2000万では全く足りない。

          自分でも計算してみたが、えっ、という額の貯金が必要であることが分かった。

          しかし、設計事務所はサラリーマンと異なり、定年はない。

          体力と建築主にさえ恵まれれば年金生活は良くも悪くもない。

          ただ、7,80歳の設計者に若い夫婦が設計を依頼するかというと怪しいとは思う。

          だから、事務所開設後は事務所を継続していくことも考えつつ、

          老後の蓄えも必要ということが頭によぎりながら走ってきた。

          そして、仕事が落ち着いてきた最近、事務所の継続と老後生活を考えた時に

          再び走り出さなければと思ったが、ふと思った。

          たぶん今のまま、休みなく夜中まで毎日仕事をして必死に走っても

          目標とする「建築と法律のプロフェッショナル」に少しずつ近づいていくかもしれないが、

          仕事量が軽くなった今だからこそ、すべきことがあるのではないだろうか。

          もちろん、今後もインプットとアウトプットは死ぬまで続けていくだろうが、

          最近のいろんな人からの打合せのやり方の助言で

          設計事務所としてのバージョンはアップすると思う。

          ただ、私自身が考えているいくつかのすべきことに時間をつぎ込んで

          私自身をバージョンアップすることが長い目で見ると必要なことかもしれないと思う。

          先々を考えれば不安に苛まれるが、

          このタイミングで考え方や生活を敢えてスローダウンさせて

          今すべきと思うことに集中的に取り組みたいと思う。

          私自身も納得のいく、「建築と法律のプロフェッショナル」に

          より近づくことができるかもしれない。

           

          私はすでにプロフェッショナルなのだ

          2019.08.16 Friday

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            JUGEMテーマ:人生論

            もう少しで完成する案件の建築主から連絡があった。

            バルコニーは当初ウッドデッキで仕上げる予定だったが、

            最終的にタイルで仕上げることになっていた。

            工事も後半になってその設置のための土台部分に

            施工者から予期しない追加見積が上がってきたため、

            結局、断念することになった。

            建築主としては私が以前にウッドデッキからタイルに変更しても

            そこまで費用は変わらないと言っていたのに、

            何故、このタイミングで追加見積なのかが分からないという内容だった。

             

            私の方では原因ははっきり分かっていた。

            着工前後に最終タイル仕様に決定したため、

            仕上表の図面にはその旨、記載していたが、

            着工までに時間はなかったので、

            それ以上の詳しい図面はなかったこと。

            そして、その結果、設計の意図と施工の意図が食い違っていたことが原因である。

            ちなみにこのタイルは施主支給品であった。

             

            この「施主支給品」と「着工図完成後の工事中の変更」は

            数年前から私の悩み事だった。

            具体的に言うと、これに絡む内容で建築主と施工者の非がない場合は

            結局それに掛かる費用は設計である私が支払うことになる。

             

            「施主支給品」はその名の通り、施主が材料なり製品を直接支給することである。

            今はネットで何でも手に入るので、途中のマージンが掛からず、

            施工者に依頼するまでもないものは施主支給品にすることが多い。

            ただ、建築主が材料や製品を発注することは不慣れなため、

            私が手伝うことが多い。

            しかし、ネット上の聞いたこともないメーカーとのやり取りに

            私も慣れている訳ではない。

            通常は打合せで仕様を決めていき、その採用しようとする仕様を

            ネットや直接メーカーに確認しつつ、図面を作図していく。

            そして、施工者はその図面に基づき、見積を作成し、

            発注する段階ではその仕様のメーカーからの確認図面が設計の方に送られてきたり、

            メーカーからの質疑のやり取りを行ったり、そのサンプルを見た上で

            問題ないか等を確認した上で現場へ納品される。

            また、完成後に不良があったりしても施工者を通じて対応してもらいやすい。

            結局、施工者経由の方が何重ものチェック体制になっていたり、

            メンテナンス体制が手厚いのである。

            しかし、施主支給品となると、施工者の方でも判断できないので、

            チェックは設計者頼みになる。

            また何かあった場合も施工者を頼ることができず、

            一応携わった専門家である、設計の私が責任を負うことになる。

             

            そして、「着工図完成後の工事中の変更」だが、

            初回の要望聞き取りから計画内容の概要、大まかな仕様を決定した上で

            建築主との基本設計を完了する。

            そこからは細かな納まりの検討や

            作図することで見えてくる問題点等を解決しつつ、

            きっちり施工を行うための着工図となる実施設計が完了する。

            そして、その後、工事が始まっていき、

            図面との整合性を現場で確認しながら工事監理をしていき、

            建物が完成する、というのが、原則である。

            また、着工図を完成させる時に私は今までの打合せで使用した図面や

            建築主とのやり取りのメール等を全部、着工図と確認していく。

            この作業は早くとも数週間、長ければ1,2か月ぐらいかかる。

            そして、最終、その内容を建築主とチェックしていく。

            地味で骨の折れる作業だが、私自身、それはとても大切な工程だと考えているので、

            その作業は欠かせない。

            ただ、その作業を行うことでそこまでの時点での大きな抜けや

            大きな勘違いは過去ないので、正しいことなのだと思う。

            だが、問題は着工図完成後に変更する場合である。

            そもそも着工までに全ての仕様が決定することが稀である。

            そして、工事中に変更がなかったこともほぼない。

            建築主には必ず伝えるが、着工するとバトンが設計者から施工者へ渡る。

            具体的に言うと、設計側では建材をいつ発注しているかも分からないし、

            各業者の段取りがどの段階かを知ることができない。

            変更が可能かを施工者に確認すれば済むのではないかと思うかもしれないが、

            一番ネックなのが、工事が進んでいる以上、検討したり作図している時間は

            ほぼないのである。

            着工前の作業を考えると、一般道でUターンして寄り道していた車が

            高速道ではそんなことはできない状態と同じである。

            経験上、些細な変更だから問題ないと思って変更した内容でも

            巡り巡ってそんなことになるのか、と痛い目に遭うのは数知れない。

            ただ、ハウスメーカー等のように図面に印鑑を押させて

            後日の変更を認めないようなことはしたいとは思わない。

             

            話は戻って、その連絡頂いた建築主の内容は

            まさしく私がずっと悩んでいた内容だったので、

            ある意味、甘える形で日頃の疑問をぶつけさせてもらった。

            建築主が設計者から悩みを相談されても困るだろうなと思ったが、

            この人達ならそれを受け止めて

            何らかの答えを出してくれるのではないかと思えたからである。

             

            約2時間かけて書いた長文メールにその建築主から丁寧な回答があった。

            以下のような内容だった。

             

            いろいろな要望や変更に対応してくれた田中さんに感謝しています。

            ただ、田中さんが望まないような状態になることが多いのであれば、

            芯の部分はぶれずにやり方を変える必要があると思います。

            そして、私達はあくまで一般人で、田中さんは設計のプロだから

            そうならないように田中さんご自身が私達を導いていく必要があります。

            そんな内容だった。

             

            そのメールを何度も読みなおし、

            私自身が日頃仕事をする中で思うことをメモしているが、

            それも読みなおしているうちに答えが見えてきた。

            結局、原理原則通りに設計をしていくこと、が大切だと思った。

            どんな建築主にも最初の方に完成までの工程表を渡すが、

            必ず言われるのが、そんなに時間がかかるんですか、である。

            2階建て木造戸建て住宅で、基本設計に3か月、実施設計と確認申請に3か月、

            見積調整と工事段取りに2か月、建築工事に5か月前後の

            トータル13か月程度である。

            私自身も完成までに1年以上は長いと思うが、

            実際はこれでも足りないことがほとんどである。

            仕様も決まっていて、建築主もこだわりがそれほどないのなら、

            8か月程度でも可能だと思うが、設計事務所に依頼するということは

            建築主のこだわりが強いということだから、

            より長い工程にならざるを得ない。

            また、どの案件も共通だが、お会いした時点で完成を急いでいる。

            さらに工程を提示されて1年以上と聞かされればもっと早く完成できるのではないかと

            思うのが当然かもしれない。

            だが、上記の通り、実際打合せが始まれば、本来は最初の基本設計で

            建築主との打合せはほぼ概要だけでも終えておかなければ、

            その1年後の完成ですら危うい。

            完成時期を早めて、基本設計に時間をたくさん使えば、

            その他の工程にしわ寄せが行く。

            ただ、その他の工程も決して余裕を持った工程でもないので、

            結果的に無理やり基本設計を終え、実施設計をしながら基本設計の残りを行い、

            着工する段階でもまだ基本設計をしていたりする。

            原理原則からすればすでに破綻している。

             

            以前に勤めていた住宅会社では仕様がほぼ決まっていたが、

            打合せ期間も4か月、打合せ時間も2時間と決まっていた。

            決まってはいたが、実際打合せをすると、

            打合せ内容の飲み込みが早い人もいれば

            こだわりたいけど、何をどうすれば良いのか分からない人もいた。

            特に後者の人には私の独断で2時間ではなく、

            その人が納得するまで打合せを行った。

            同じ話を2回、3回することになっても分かってもらって

            納得してもらうまで何時間でも打合せを行った。

            住宅業界は分かっているようで分からない家のことを扱うので

            別名クレーム業界とも呼ばれている。

            そんなやり方が良かったのかどうか分からないが、

            部下のクレーム処理には何度もいったが、

            自分の案件のクレームは受けたことがなかったので、

            時間はかかってもそのやり方が正しいのだと自信を深めた。

            実際、独立後は原則、こだわっている建築主ばかりなので、

            1回の打合せも平均すると4時間ぐらいしているのではないだろうか。

            また、打合せ期間や打合せ時間は自分の裁量で決めれば良いから

            建築主が納得するまで行った。

            ただ、唯一ネックなのが、どの建築主も完成を急いでいるということである。

             

            今回、建築主から頂いたメールで思ったが、

            設計のプロとして仕事をし、

            建築主に寄り添って良い建物を設計しているつもりが、

            知らないうちに一般人である建築主と同じ目線で設計を行っていることに気付いた。

            完成を急いでいるならそれに合わせます、

            その仕様が決めきれないなら工程とは違いますが工事中に再検討しましょう、

            今日はこれだけの内容を決めないと完成時期がずれる可能性もありますが

            しょうがないから次回打合せまでになんとかしましょう、等。

            それはそれでしょうがないし、その姿勢自体は間違っていないが、

            プロフェッショナルとして設計をしているなら、

            工程の今、我々はどこにいるのか、

            そして、その決定を延ばすことはどのような結果になるのか、等の

            設計のプロである私からしか伝えられないことを十分に分かってもらう努力が足りなかった気がする。

            決して、伝えなかった訳ではないが、私がプロで建築主は一般人という認識ではなかった。

            同じ目線で普通のことを言っているのだから伝わっているものだと思っていた。

            ただ、改めて一般人とプロの立場を言われて、

            ちゃんと説明はしていたけど、ほぼ伝わっていなかったような気がした。

            そう、私からすれば設計、そして、建築のプロフェッショナルとして日々の仕事はしているが、

            自分の理想とするプロフェッショナルになるにはまだまだ努力が足りないと思っていたが、

            一般人である建築主からすればすでに十分、プロフェッショナルにしか見えないのだ。

            寄り添う姿勢はそれで良いかもしれないが、

            そもそも立ち位置が違うのだからこちらが普通に話していることも

            分かってもらえるという前提ではなく、指導していく立場なのだ。

            結局、自分で良かれと思っていたことが自分をどつぼに落とし込んでいたのかもしれない。

            立ち位置が違うからこそ、それを気付かせてくれたのかもしれない。

            手を抜かずに地道に行うことが最近の目標だったが、

            それに加え、設計・建築のプロフェッショナルとしての原理原則を前提とすることで

            ここ数年の悩みは解消されるのかもしれない。