伝統軸組構法

2017.01.17 Tuesday

0

    JUGEMテーマ:建築・設計・デザイン

    去年の春に実家が熊本地震で震災し、全壊の判定を受けた。

    夏に丸二日かけて現場調査し、その後合間に現況図起こし、計画プランの検討を重ねてきた。

    また、そのプランに基づいての概算見積、等を作成し、先日、その説明等で実家を訪れた。

     

    建物全景。私の祖父の代に建築し、約築70年。

    図面を起こして初めて分かったが、延床面積が約90坪あった。

    今まで木造住宅はたくさん設計してきたが、一番多い規模は30坪程度である。

    想像以上の大きさに驚いた。

     

    現地で改めて事前に送付していた現況図、計画プラン、概算見積等を両親に説明した。

    また、その資料と共に、この半年でこの建物・土地についていろいろと調べた内容も

    書類を作成し送付していた。

     

    調べていろいろと分かったこと。

    ・4年前の時点で町役場から最大震度7の地震が近い将来起こる可能性があることがすでに発信されていたこと。

    ・これも町役場情報でこの周辺は河川が氾濫した場合に最大で1.5m程度の浸水のおそれがあること。

     (床の高さが地面から75cm程度あり、やたら高いと思っていたが、

     おそらく洪水に対しての先人の知恵で床高さを高く設定していると思われる。)

    ・伝統構法は大きな地震の度に被害を受けているイメージがあったが、

     仕組みとしては土壁で地震の衝撃を吸収し、構造体で粘って、それでも耐えきれない場合は

     建物が束石から滑って対応している、柔らかい構造体であること。

    ・現代の木造軸組構法は壁・床をパネル状に作り、金物で固め、頑丈な箱を作って

     地震に対応している、硬い構造体であること。

     ただ、倒壊・損傷すると補修等はかなり難しい。

    ・日本の風景を作っている伝統構法の家は研究があまりなされておらず、

     関連資料や専門書等がかなり少ない。

    ・地震で倒壊している伝統構法の家はどれも築年数が最低でも50年以上で

     現在の家とは経年劣化の度合いや法律で決められている性能が異なるため、

     一概に地震に弱いとは言えない。

    ・伝統構法は構造体も含め、全てが視認できるため、メンテナンスがし易い。

     ただ、その構法に対応できる職人さんが少なくなってきている。

    ・建物は全壊扱いだが、大黒柱は傾き・変形がなく、白アリの蟻害を受けている所と土壁が

     激しく損傷を受けているように見えるだけで建物としてはそこまで損傷していない。

     

    ただ、計画プランの概算は建物規模が大きく、グレードアップすることもあり、新築が1,2軒建つぐらいかかる。

    損傷を受けている部分だけの補修でも通常のリフォーム工事とは比較にならないぐらい費用がかかることが分かった。

    年老いた両親が負担するにはかなり厳しい内容である。

     

    小屋裏の梁組。

    設計を仕事にしている人間からすれば、

    こんな立派な構造の家を建てることはそうそうない。

    こんな貴重なものを解体してしまうのはもったいなく感じてしまう。

     

    こちらは納屋の全景。

     

    周辺の地域ではブルーシートが掛けられている家もまだまだあったが、

    地震から9か月経ったこともあり、更地になっている場所が目立った。

    ただ、この伝統構法の特性を加味すると、

    見た目だけで安易に解体してしまわずにみんなの記憶を受け持った、

    そして、この地域の風景を形作っているこれらの建物をなんとか残していきたい。

    だが、予算とは無関係にはそれは為し得ない。

    設計者である私が現況図、計画プラン、概算見積を作成することで

    ある程度、方向性を決めて行く材料は揃ったと思う。

    まだ動き出すには時間がかかりそうだが、

    より良い方向に進めるように私のできることを考えていきたいと思う。

    ふと考えると、今日は阪神大震災の22年目の日だった。

    今、神戸に暮らし、熊本地震の被害を受けた建物の検討をしていることに

    何かしらの縁を感じる。

     

     

     

    スポンサーサイト

    2020.05.20 Wednesday

    0
      関連する記事
      コメント
      コメントする